「日本にはペットフードを規制する法律がない」 「海外に比べて日本の基準はとてもゆるい」 「添加物は5%未満なら表示しなくていい」

といったことがネット上では、まことしやかにささやかれています。 ですが、こうした説明には不確かな情報や古い情報、誤解が入り混じっています。 ここではそれを紐解いていきましょう。

ペットフード安全法

有害な物質が含まれるフードの製造・販売を禁止し、成分規格や表示ルールを定める「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」、通称「ペットフード安全法」。 この法律が施行されたのは2009年。そのきっかけとなったのは、2007年に北米で起きたメラミン混入事件でした。 この事件は、アメリカやカナダで販売されていたペットフードにメラミンなどが混入し、多数の犬や猫に健康被害が発生したものです。米国で問題となった製品の一部は、日本にも少量が並行輸入されていましたが、健康被害が確認される前に回収されました。ですが、この事件をきっかけに、国内でもペットフードの法規制の必要性が議論され、新たな法律の制定に至りました。 これにより、2009年以降、一般的な人間用食品と同様、ペットフードも国が安全基準や製造・衛生管理のルールを定め、事業者がそれを守る責任を負う仕組みが整いました。 具体的には、成分規格や製造方法の基準に適合しないフードの製造・輸入・販売の禁止。また、問題が起きた際に流通経路を追跡できるよう、製品名および数量などの記録が、製造・輸入・流通に関わる事業者に求められています。

表示の義務

また、ペットフード安全法では、名称、賞味期限、原材料名、原産国名、事業者名・住所の表示が義務付けられています。なかでも、製造時に使用した原材料や添加物はすべて記載する必要があります。 さらに、多くの市販ペットフードでは「ペットフードの表示に関する公正競争規約」という業界ルールに従っています。こちらでは、上記の5項目に加えて、

「総合栄養食・間食・療法食・一般食などの用途に応じた区分」 「内容量」 「給与方法」 「たんぱく質・脂質・粗繊維・灰分・水分などの成分」

といった表示が求められています。 また、添加物以外の原材料は、使用量の多いものから順に表示することも公正競争規約で定められています。 このように日本におけるペットフードの制度は、決して無法地帯ではありません。 安全性について考えることはもちろん大切ですが、必要以上に怖がることも、宣伝文句だけで安心することも、どちらも避けたいところです。 まずは、開示されている情報をきちんと把握することが、愛犬の健康を守る第一歩でしょう。

参考文献

農林水産省「ペットフード安全法 表示に関するQ&A」 農林水産省「ペットフード安全法 製造に関するQ&A」 ペットフード公正取引協議会「公正競争規約に基づく必要表示事項及び表示制限について」 植田明浩「ペットフード安全法の誕生と今後」『日本獣医師会雑誌』61巻9号、2008年