高齢者の食事は、かつての「野菜中心の粗食」から、「タンパク質をしっかり摂る、肉・魚ファースト」が推奨されるようになってきました。高齢になると自然と減ってしまう筋肉を、タンパク質の摂取によって維持することが大切とされています。必要なタンパク質量は、若い世代より多いという見解もあります。
これと同じようなことが、犬の栄養面でも言われ始めています。
持病のない健康なシニア犬には、十分なたんぱく質を
「シニア犬には、腎臓のために低タンパクを」という考え方は、以前は広く言われていました。ところが近年の研究で、この前提はかなり見直されています。
高齢の犬は、加齢により筋肉量が落ちていきます(サルコペニアと呼ばれます)。7〜12歳の間に筋肉量の15〜25%が失われるとも言われていて、これを補うために必要なのが、むしろ十分なタンパク質です。実際、若い成犬に比べて高齢犬は最大50%多くタンパク質が必要になる可能性がある、という報告もあります(Wannemacher & McCoy, 1966, Journal of Nutrition 88: 66–74。若い犬は体重1kgあたり1日0.4gの窒素で体内のタンパク質貯蔵が満たされたのに対し、高齢犬は0.6gを必要としたという実験結果に基づく)。
「シニアだから低タンパクに」という考え方は、ここ数年で見直され始めています。
実際の商品は、新旧が入り混じっている
それでは、実際に店頭やサイトに並んでいる「シニア用」フードはどうなっているのでしょうか。乾物換算のタンパク質%を並べてみると、ブランドによってかなりの幅があります。
| 商品タイプ | タンパク質(乾物換算) |
|---|---|
| シニア用A(小型犬向け) | 22.1% |
| シニア用B(大型犬向け) | 18.7% |
| シニア用C | 約33% |
| シニア用D | 36% |
同じ「シニア用」という棚に並んでいても、AAFCO(米国のペットフード栄養基準団体、詳しくは別記事「AAFCOって何?」を参照)の成犬最低基準(18%)ぎりぎりのものから、その倍近くまで、実にさまざまです。獣医栄養学の指針がアップデートされた一方で、商品ラインナップの更新ペースはブランドごとに差があり、今はまさに過渡期のようです。
「シニア用」という表示だけで安心せず、一度、乾物換算%を確認してみることをおすすめします。
参考文献
- Wannemacher, R.W. and McCoy, J.R. (1966). Determination of optimal dietary protein requirements of young and old dogs. Journal of Nutrition, 88, 66–74.
- National Research Council (NRC). (2006). Nutrient Requirements of Dogs and Cats. National Academies Press.
- Hill's Pet Nutrition公式サイト 商品ページ(Guaranteed Analysis / Average Nutrient & Caloric Content表記).
実際の商品で見てみる
記事で説明した項目を、掲載商品のデータで確認できます。