ナトリウムは、いわゆる「塩分」の主成分です。人間の食生活では「塩分は控えめに」というイメージが強いですが、犬にとっても同じでしょうか。
ナトリウムの役割
ナトリウムは、体液のバランスを保ち、神経伝達や筋肉の収縮に関わる、電解質の一つです。不足すると、脱水や食欲低下、元気消失などにつながります。フードに塩(ナトリウムを含む)が加えられているのは、単なる味付けだけでなく、こうした生理機能を保つためでもあります。
AAFCOの基準:最低値はあるが、上限はない
AAFCOの基準では、ナトリウムは成犬で最低0.08%(乾物換算、2016年版。1997年版では0.06%)、成長期で最低0.3%と定められています。一方で、上限は設定されていません。
これは「多く摂っても問題ない」という意味ではありません。理由は主に2つあります。一つは、ナトリウムを多く摂ると喉が渇いて水を多く飲むようになり、腎臓が健康であれば、その水分と一緒に余分なナトリウムを尿として排出できるためです。もう一つは、極端に塩分の多いフードは、健康被害が出るほどの量を摂取する前に、そもそも嗜好性が落ちて食べなくなると考えられているためです。上限が設定されていないからといって、無制限に安全ではないことは、以前のマグネシウムの記事でも触れた通りです。
実際の市販フードの幅
市販のドライフードのナトリウム量は、乾物換算でおおよそ0.3%〜1.0%程度まで幅があります。獣医栄養士の間では、健康な若い成犬向けに0.2%〜0.4%程度が一つの目安とされることが多く、原材料にこだわったブランドは0.3%〜0.5%程度に収まる傾向があるとされています。
例外は、心臓・腎臓・肝臓に持病がある犬
健康な犬にとってはあまり気にする必要のないナトリウムですが、心疾患・腎疾患・肝疾患のある犬であれば、その摂取量に注意が必要です。これらの病気では、体がナトリウムと水分を溜め込みやすくなり、体液貯留(むくみや胸水・腹水)につながることがあります。そのため、獣医師の指示のもとで、0.08%〜0.25%程度まで制限した療法食が使われることがあります。
一方で、ストルバイト結石の予防・管理を目的とした療法食では、逆にナトリウムを増やす設計が使われることがあります。ナトリウムを増やすと喉が渇いて水を多く飲むようになり、尿が薄まって結石の原因物質が濃縮されにくくなるためです。同じナトリウムでも、症例によって「減らす」「増やす」どちらの方向にも調整される、というのは覚えておくと面白いポイントかもしれません。
つまり、ナトリウムは、心臓・腎臓・肝臓といった持病の有無で判断が変わる栄養素だと考えてください。持病がある場合は、必ず獣医師に相談してください。