ビタミンDは、骨粗鬆症を予防する栄養素と認識している方も多いかと思われます。

犬にも大切な栄養素ではありますが、むしろ過剰摂取を心配するべきケースが増えています。

特に鮭やマグロなど、魚をメインのタンパク質源にしたフードやおやつで、ビタミンDの「摂りすぎ」が問題になっています。

ビタミンDは、脂溶性ゆえに体に溜まる

ビタミンDは脂溶性のビタミンで、カルシウムの吸収や骨の維持に関わっています。水溶性のビタミンと違い、余分に摂っても尿としてすぐには排出されず、脂肪組織や肝臓に蓄積していきます。過剰に摂取すると、多飲多尿・嘔吐・よだれ・食欲減退といった症状が出て、高濃度になると腎機能障害を起こすこともあります。

AAFCOの基準(2016年版)では、ビタミンDは乾物換算で500〜3000IU/kg DMと、下限だけでなく上限も設定されています。これまでの記事で扱ったナトリウムやマグネシウムのように「下限はあるが上限はない」栄養素とは、性質が異なります。

実際に測ってみると、基準超えが続出

2026年のペット栄養学会で報告された調査では、魚を主なタンパク質源とする国内流通の商品6点について、実際にビタミンD含有量を分析しています。

製品内容ビタミンD(乾物換算)AAFCO上限(3000IU/kg DM)との比較
製品A一般食(鮭・ドライ)1,481 IU/kg DM基準内
製品B一般食(鮭・ドライ)3,340 IU/kg DM上限超え
製品C一般食(マグロ・ドライ)5,258 IU/kg DM上限の約1.8倍
製品Dおやつ(鮭ペースト)14,050 IU/kg DM上限の約4.7倍
製品Eおやつ(鮭ジャーキー)31,532 IU/kg DM上限の約10.5倍
製品F手作り食(鮭のみ)3,010 IU/kg DM上限超え

6製品中5製品が、AAFCOの上限を超えていました。特に製品Eの鮭ジャーキーは、上限の10倍以上という数値です。

ここで注意したいのは、これらはいずれも「総合栄養食」ではなく、「一般食」や「おやつ」だったという点です。一般食やおやつは、AAFCOの基準を満たす義務もありません。こうした製品を主食のように与え続けてしまうと、ビタミンDが過剰になるリスクがあります。

海外では、実際に起きたリコール

2018〜2019年、米Hill's Pet Nutrition社は、缶詰ドッグフード33種類を、ビタミンD過剰を理由に自主回収しました。FDA(米食品医薬品局)の調査では、製品によって意図した含有量の最大70倍のビタミンDが検出されたケースもあり、複数の犬において、急性腎障害による死亡が報告される事態になっています。

犬の体はビタミンDを皮膚でほとんど作れず(人間と違い、紫外線による自己生成能力が低い)、食事から摂る必要がある一方で、上限を超えた摂取は明確に健康リスクになる、というバランスの取りにくい栄養素です。AAFCOが上限を5000IU/kg DMから現在の3000IU/kg DMに引き下げた背景にも、不足よりも過剰摂取の方がより重篤な健康被害をもたらすためです。

「同じタンパク質源だけ」のリスク

今回の調査では、鮭のみをタンパク質源にした手作り食(製品F)も基準を上回りました。同じ食材ばかりに偏った食事は、意図せず特定の栄養素を過剰摂取するリスクを伴う一例と言えそうです。

魚メインのフードを与えている際は、おやつを別の原材料のものにするなど、一度見直してみることをおすすめします。

参考文献